生まれては別れにむかうわたしたちのために
翳りゆく部屋に気持ちを重ねてた ほころんでゆく四年目の春
なるはずじゃなかったことばかりあった 抱き合うことを恐れるふたり
退屈に慣れてしまったくちびるは悪者になることができない
カシミアのようなやさしさでこのまま堕落させてよ鍵をかけてよ
悩ましい眦(まなじり)は遠くにあって心臓はつぎつぎ射抜かれる
なごり雪 類語辞典のなかに正しい感情をさがす愚かさ
発光すテールランプにただならぬ意思を見いだしてしまう夜半
春の日のオニオンスープ 注がれた愛情にただ溺れていたい
さよならは言わないでいく 菜の花がゆれるそのたび胸がくるしい
終電という方舟にひとりきり涙の数をかぞえてねむる
(title by クワリフの朝)