かなしみだけが心を穿つ


   抱擁す砂浜の果てしなくあり

   氷水を喉に与ひては生きている

   枇杷てふ果実の甘しは孤独なり

   蝉の羽を剥がば素肌のあらわるる

   立ち竦む花色に染む短夜に

   蜜豆をつつきし匙の光り満つ

   柿の花白さを競ひ合つていろ

   小暑来ぬひねもす吾を問ひにけり

   かなしみの海岸線を撫づる指