もろおもひ
ぬえどりの のどよふ君の咽元(のどもと)に突き立てる爪 うらなし思ひ
暮れ果てぬ我が身とぞ願ふゆふづくよ入る月に君の姿を重ね
桃の香の君を忘るるほどおろかでありますまいや十五の恋は
梅雨空のながめに勝るものはなし庭にまつあり君が来ぬとて
をぐらしや いとしい人すら誰そ彼と香も知らぬ我こそうらめしけれ
さやうなら 椿を背にして君は言ふ退く恋もまた恋と言ふのか
咲き誇れ四条河原に小百合花 ゆりの朝(あした)に君が見るまで
来し方を見ゆれば君の思ひ人 身を知る雨のなんと尊き
はながつみ 別れかつまじ思ひ増す恋泣く我をこほろぎが笑ひ
菅の根の長しみぐしの嫋(たを)やかに我が咽頭を絞めたることよ