2013.07-09


   誕生日間違えし祖母の電話で覚むる朝だれもかれもみんな (7.2)

   あなたに出会うまで二十四年間すい星に乗りずっと泣いてた (7.7)

   隣人の死ぬるをつたふ夏の村落はしづかに吾を食らはむ (7.10)

   手を洗へども洗へども今朝食へりカレーの匂ふ夏来たるらし (7.16)

   しましまのシャツみずたまのシャツ泳がせるわたくしは7月の海 (7.22)

   夏と君は似ている。何もしてくれない。夢ばかり見させる。ずるい。 (7.24)

   熟れた傷口を弄びて雨は線路を埋めたるほどに降りぬ (7.27)



   こぼれるように美しい人よ世界はあなたを祝福している (8.3)

   口に含んだサクランボから淡くもれる光をきみにもあげる (8.5)

   朝顔を観察するの苦手です、誰にでもある、こういう秘密 (8.6)

   おとなしい顔をしてにがうりの表面をなぞるあなたは何者 (8.10)

   夏の終わりと恋の終わりはいつも突然やってくるの。知ってた? (8.30)

   奪うばかりが愛ではないんですね、あなたの頬を撫でつつ思う (8.30)



   「肌に苔のむすまで君を愛せる」「その苔のやわらかさ、教えて」 (9.4)

   熟れた果実のよな身体さわらせてください蜜があふれる前に (9.5)

   いもうとよ美しくあれ、いつの日か猫になる運命だとしても (9.13)

   火星では新鮮な水は飲めません、だから私のもとへ来なさい (9.17)

   中秋の名月は曇り空にも映える 月から来たってほんと? (9.19)

   うつくしいうつくしい月を撫でれば手のひらは透きとおってしまう (9.19)

   清らかな繭で在りたし世界の仕組みを知ってしまったとしても (9.22)